プロジェクトProject

公益財団法人日本ゲートボール連合(JGU)との共同研究
「ゲートボールの普及と体育での活用に関する研究」

2019年10月1日~2022年3月31日

研究代表者
松元剛(筑波大体育系)

1.研究背景

〇ゲートボール普及の歴史について

ゲートボールは日本発祥のスポーツである。1947年に、北海道に在住していた鈴木栄治氏がヨーロッパの伝統的な競技「クロッケー」をヒントに、子供たちが気軽に楽しむための遊びとして考案したことが始まりとされている。 1960年に入ると、ゲートボールの手軽さや体力的負担が少ないという特性から、高齢者向きのスポーツとして全国の教育委員会から徐々に脚光を浴びるようになった。1964年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に、文部省(現:文部科学省)から「国民皆スポーツ」が提唱され、ジュニアからシニア層まで、年齢や性別を問わず、誰でも気軽に楽しめるスポーツとして全国各地で普及されるようになった。また、一方で各地での普及と同時にゲートボール組織団体が乱立し、各団体でそれぞれルールが制定されたことから、大会等で混乱を生じるようになった。愛好者からはルール統一の声が大きくなり、それを受けて(財)日本体育協会・(財)日本レクリエーション協会(当時)などに所属する学識経験者による、「全国統一組織準備委員会」により検討を重ねた結果、1984(昭和59)年12月、ゲートボール界を統括する団体として(財)日本ゲートボール連合(当時)が設立されることになった。 世界に目を向けると、1985年に世界ゲートボール連合が設立され、1987年には南米ゲートボール連合、1991年にはアジアゲートボール連合が相次いで設立された。日本で発祥してから約70年、現在は50以上の国と地域の人々に愛される、国際的スポーツへと成長している。(日本ゲートボール連合公式サイト参照)

〇ゲートボールの競技特性について

先行研究より、ゲートボールに関する研究では、高齢者を対象にしたゲートボールの体力的特性についてのものが多く、競技特性に関する研究はなされていない。 一方、球技スポーツの分類論で考えると、ゲートボールはターゲット型球技スポーツに属し、ターゲット型スポーツにおける戦術的課題については、ショットの方向性と距離を適切に決定することとされている。(Stephenら,2013)

〇ゲートボールの競技的特性と教育的価値について

ゲートボールは、プレイヤー同士が接触しない安全なノンコンタクトスポーツであり、運動スキルも比較的容易であることから、参加者が一緒に楽しむことができるインクルーシブなスポーツの可能性を秘めている。さらにゲーム中のプレーにおいては高度な作戦が要求され、戦術型スポーツとしての側面も有しており、未就学児や小学校低学年向けに教材を開発提供することが、その後の運動学習への円滑な移行にも繋がることが考えられる。したがって、基本的な運動スキルを獲得でき、かつ戦術学習も行えるという点において、ゲートボールの持つ教育的価値は高いことが予想される。

〇日本ゲートボール連合(JGU)による再生プロジェクト

現在のゲートボールは,「競技する」だけではなく「高齢者中心に,同世代の同じ趣味と文化を共有する人々のコミュニティ」に,その価値と,特異性があるが,日本社会が急激に変貌を続ける中で,このコミュニティは急激に縮小し,いま存続の危機にある。そこで,日本ゲートボール連合(JGU)は,「再生プロジェクト」をスタートし,ゲートボールの普及を目指している。

ゲートボール再生プロジェクト
「ゲートボール“beyond2024”」(日本ゲートボール連合HP)

(JGUの資料より引用)

2.研究目的

①ゲートボールの競技的特性を明らかにし、さらなる競技普及・発展に寄与すること ②ゲートボールを幼児教育や小学校低学年向けの学校体育における戦術学習教材として提供することで、フィジカルリテラシーの修得を目指す。

3.研究課題

①ゲートボールの競技的特性を明らかにし、学校教育における教材価値を検証する。 ②幼児・小学校教育における教材開発を行うと同時に、年齢に応じた用具の開発を検討する。 ③大学体育における学修教材としてのインクルーシブなコンテンツ開発を行い、レクリエーショナルスポーツとしての、新たなルール開発に繋げる。 ④障がい者スポーツとしての可能性を検証する。

4.研究体制(2020年4月1日〜2022年3月31日)

研究責任者
松元剛(筑波大体育系)
研究分担者
三田部勇(筑波大体育系)
松尾博一(筑波大体育系)
齋藤拓真(筑波大体育系)
渕上真帆(筑波大体育系)
梶田和宏(京都先端科学大学)
青野寛子(茨城県取手西小学校)
以上